高校一年生の娘(あずみ)が 宮崎県の高校の弁論大会に出ました。
小学校にあがる前から、私は塾で英語の勉強をし、小学六年生の時から英検二級を受け始めました。
私は七回も落ちてしまいました。
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「もし、あなたが落ち込んでいるならば、あなたは過去に生きています。不安でいるならば、あなたは未来に生きています。でも、心が穏やかであるならば、あなたは今を生きています」
これは、中国の哲学者である、老子の言葉です。この言葉をラジオから聞いた瞬間、それまでの自分を思い返してみました。元々ネガティブな性格であった私は、小さな事で悩み、ちょっとしたことに傷つき、勇気を出して行動してみても失敗したら、「やらなきゃよかった」と後悔ばかりしていました。そして、落ち込んでいたり、不安であったりしたことがとても多かったのです。
「今」を生きることこそが「豊かに生きていく」ための「鍵」になるだろうと、私は考えます。そのうちやるから大丈夫、とりあえず先延ばしにする、という言葉をよく耳にします。それでは「今」を本気で生きていることにはならないのではないでしょうか。「いつかそのうち」というのは「決してやって来ないのです」。
小学校にあがる前から、私は塾で英語の勉強をし、小学六年生の時から英検二級を受け始めました。過去問題から、英文をそのまま暗記するだけの対策しかしていなかったので、英検を受けた当時は、初めて見る長文の内容はほとんど理解できませんでした。大人が話題にするような政治・経済のことなども容赦なく出題されます。日本語でもよく理解できていない内容を英語で問われても、ついていけなかったのです。私は七回も落ちてしまいました。
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家族の前では平気そうな顔はしていたものの、本当は、落ち込んで、悩んで、次はどうなるだろう、と不安になるばかりです。自分から進んで勉強する気にはなれませんでした。本来なら楽しいはずの夏休みやお正月も、検定日が迫っているという焦りばかりが募り、心からは楽しめませんでした。しかし、この言葉を聞いて以降、そのようなマイナスの感情に襲われそうになったら、それをプラスに転換できるようになったと感じます。悩んだり、不安になったりする前に、自分から行動し、目の前の課題をひとつひとつ片付けていけるようになったのです。初めのうちは、難解だった表現も、少しずつ時間をかけることによって、わかるようになってきました。英語をやっていくうちに母国語である日本語の理解も深まったように思います。わかるようになると、少しは楽しくなり、自分にも自信がついたように思います。今までは「頑張って」と言われても、「どうせ他人事じゃないか」、とひねくれていました。しかし、検定前に安心するような優しい言葉をかけてくれる家族に素直に感謝できるようになりました。
落ち込んでしまうのは、つまり落ち込むための時間があるからなのでしょう。何かやることがたくさんあって忙しくしていれば、そもそも落ち込むことすら忘れてしまいます。だから私は、勉強の合間には、趣味に没頭しました。「勉強はもうしたくない」と思ったら、安らぎを求めるために映画を見たり、本や漫画を読んだりしていました。
不安になってしまうのは、結局は何もしていないからなのでしょう。目の前のことに意識を集中していれば、不安な気持ちもなくなります。私は、不安な気持ちに押しつぶされる前に、英語の例文を暗唱し、過去問を解き、お父さんが説明してくれたことを頭に入れ、いつもはテレビを見る時間に例文を読むことにしました。
私にとって、英検二級に合格するまでの過程は非常に苦しいものでしたが、その苦しさを味わうことで、自分の精神の大きなよりどころとなるものを得ることができたとも言えます。
「今を生きる」というのは、過去も未来も考えずに、現在、今、目の前のことに百%精神を集中させることです。
「もし、あなたが落ち込んでいるならば、あなたは過去に生きています。不安でいるならば、あなたは未来に生きています。でも、心が穏やかであるならば、あなたは今を生きています」
今では、「今」を生きている、と私は胸を張って言えます。